第4は日本人の“あなたまかせ”の考えです。私のテレビの健康番組によく出ます。そこでもし「この食品は健康によいですよ」と言ったりすると,視聴者はそれを買いに殺到します。そして,その食品を食べれば食べるほど健康になると思ってしまいます。
逆に,塩分,コレステロール,タンパク質などの摂取が多いといけないと聞くと,それならそれを摂らなければ摂らないほど健康になるのではないかと考えるのです。
一般に摂取の上限を決めることは困難ではないことが多いので,上限,つまりこれ以上の摂取はいけませんよ,という話が広く伝えられます。すると,そんなに体に悪いものはできるだけ少なくしたらよいのではないかと,短絡してしまうのです。
先日NHKのラジオ番組で,食塩についての放送のゲストになりました。そのときに同席した食塩の研究者が,「一般の主婦から,食塩がそんなに悪いものなら,なしにしたらもっと健康になるのではないですか」と質問されることが多いと述べていました。
またコレステロールを「悪玉」と「善玉」にわけ,LDLコレステロールを悪玉とすることも素人に大きな影響を与えています。誰もが「悪玉」が体の中にいることを好まないからです。もし悪玉コレステロールが私たちの健康をそれほど害するなら,脂肪を摂らないのがいちばん健康によいと思っている人は多いのです。
高田明和 (2001). 「砂糖は太る」の誤解 科学で見る砂糖の素顔 講談社 pp.46-47
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