スチュアート朝の男性ファッションは,自分の髪の毛は短く刈り込んでおいて,メッシュ地に縫い込んだ人毛のかつら(ペリウィッグ)を後頭部にピンでとめるというものだった。かつらの人毛にシラミの卵がついていることが多く,孵化するとメッシュをくぐってかぶっている者の頭部へ這い出す。耳のうしろや耳の陰で血を腹いっぱい吸うためだ。
アタマジラミは命を脅かしはしないが,ひどい不快感のもととなる。ひっかくことで皮膚炎や二次感染につながる。予防は困難だった。小麦粉を水で溶いてケーシングをメッシュ部分に固め,シラミが通り抜けるのを防ごうとした人たちもいた。ところが,練った小麦粉で乾燥したかちかちの帽子をかぶるのは,シラミがいるのと大差ない不快さではないか。
そこで,定期的に1軒1軒回ってサービスを提供する,たいていは女性のシラミとりが,招じ入れられてかつらの掃除をすることになる。
トニー・ロビンソン&デイヴィッド・ウィルコック 日暮雅道&林啓恵(訳) (2007). 図説「最悪」の仕事の歴史 原書房 pp.182
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