新宗教とカルトとの関係は,非常に難しい問題を提起している。社会的な問題を起こす新宗教がカルトとして批判の対象となることが多いが,カルトとは何か,どの教団がカルトにあたるのかを学問的に定義することは難しい。あらゆる宗教が,当初の段階ではカルトとしてその活動を始めると言うこともできるし,カルトという区分などそもそも存在しないという考え方もある。
ただ,ある新宗教がカルトとして糾弾されるのは,その教団が,世直しの思想や終末論を強調したときだということは言える。世直しの思想や終末論は,新宗教がその勢力を拡大する際の最大の武器である。この世界に終わりが近づいていて,世直しの必要があると説くことで危機感を煽り,世の終わりへのカウントダウンがはじまっていると期間を限定することで,信者を熱狂させるとともに,新しい信者を呼び寄せていく。今信者にならなければ救われないと説き,入信を促すのである。
そうした手段をとれば,信者を急速に拡大することができる。しかし,危機感を煽ることは,信者に過激な布教方法をとらせることにつながり,社会問題を引き起こしやすい。あらゆる手段が正当化され,違法な手段が奨励される。そして,仕事を辞めたり,学校を辞めて入信してくる人間も出て,家族などと軋轢を生む。しかも,終末が近づいているという予言は必ず外れるわけで,失望感や教団に対する不信感を生むことにもつながる。
島田裕巳 (2007). 日本の10大宗教 幻冬舎 pp.207-208
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