心的競合の世界で,最大のプレーヤーの1人は間違いなく感情だ。無愛想なティーンエイジャーに激怒し,配偶者に腹を立て,「私のためにいつか何かしてくれるというのか?」と何度思ったことだろう。そういった瞬間,ときどき,少し間をおくと気づくのだが,まさにその瞬間,その問いに実際には答えられない。まさにその瞬間,私の人生を価値あるものにするために,毎日,彼あるいは彼女がしてくれるすべてのことを実際には思い出すことはできない。これは,実に分かりやすい心的焦点,すなわち状況に一致した一連の現在の考えによる支配だ。まさにこの瞬間,怒りだけが支配し,怒りと一致した考えだけが姿を見せることになる。モンティ・パイソンがこのことを『ライフ・オブ・ブライアン』の中で完璧に表現している。「我々のためにローマ人はいつか何かしてくれたのか?」
ジョン・ダンカン 田淵健太(訳) (2011). 知性誕生:石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源 早川書房 pp.273-274
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