衛生の問題に対する世界的な視野の欠如は,国連と開発途上国に限ったことではない。世界には,きちんと組織化されたトイレ協会があるが——たとえばイギリスや日本に——どれも,自国にしか目を向けていない。日本トイレ協会は,11月10日をトイレデーと定め(11/10は,「いいトイレ」の語呂合わせ),中身の濃い会議をおこなっているが,通訳は用意されていない。イギリス・トイレ協会は,トイレ・オブ・ザ・イヤーと名づけたコンテストを開催して大成功したが(このコンテストで最優秀と認められると,トイレの年間売上高が2倍になるほどだ),この協会の会員は,バス・トイレメーカーの関係者ばかりで,世界の公衆衛生の問題を解決しようという熱意は持ち合わせていない。
ジャック・シムは,世界の不健全な衛生環境を改善するために活動する,地球規模の組織が必要だと考え,1999年に世界トイレ機関を設立した。彼には,この組織について,ある構想があった。世界中に存在するすべてのトイレに関する組織を,1つに取りまとめるサポート組織である。回避を徴収するつもりはなかった。彼の言葉を借りると,この組織は「リーダーではなく,召使い」なのだ。
ローズ・ジョージ 大沢章子(訳) (2009). トイレの話をしよう:世界65億人が抱える大問題 日本放送出版協会 pp.104
(引用者注:World Toilet Organaization (WTO): http://www.worldtoilet.org/wto/ なお近年,日本の企業もWTO主催の世界トイレサミットに参加しているようだ)
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