便器のほとんどは壊れているため,子どもたちは床を使用する。床がどうしようもなく汚れたら,学校の近くで利用できるトイレを探す。たいていそれは,もぐりの酒場や非白人用居住指定地にあるバーのトイレで,子どもたちはそこでビールを飲む。さもなければ,我慢して苦しい思いをすることになるか,だ。その結果,子どもたちは学校嫌いになる。トレヴァーはそのことに憤りを感じていた。「学校に行ったら,おしっこをする場所がないと,彼らにはわかっているのです。運転中にトイレに行きたくなった場合を想像してみてください。まったく集中できなくなるでしょう。そんなときに,先生の話を聞けるでしょうか?」
これは,トレヴァー流の誇張などではない。学校のトイレ施設と出席率の因果関係は,数多くの研究で取り上げられている。ユニセフの統計によると,サハラ砂漠以南のアフリカに住む少女の3人に1人が,生理中の期間に限って,あるいはそれ以外のときもずっと学校に行っておらず,それは劣悪なトイレ施設のせいなのである。タンザニア,インド,バングラデシュでは,学校にきれいなトイレを設置したところ,入学者が最高で15パーセントも増加した。
ローズ・ジョージ 大沢章子(訳) (2009). トイレの話をしよう:世界65億人が抱える大問題 日本放送出版協会 pp.127-128
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