統計によって幅はあるが,インドには40万人から120万人のマニュアル・スカベンジャー(引用者注:手作業の糞便処理人)が存在する。彼らは,個人の家庭や自治体,軍の宿舎,鉄道当局などに雇われている。線路の上であれ,詰まった下水溝のなかであれ,仕事は,糞尿がある場所からそれを取り除くことだ。そしてたいていの場合,彼らが空にするのはインドの乾式掘り込み便所だ。
掘り込み便所といえば,地面に埋めた容器に人の糞尿を溜めるものだと思われがちだが,乾式掘り込み便所は容器を埋める手間を省いたものが多い。よくあるのは,平らな地面の上に,しゃがんだときの足の幅に2つレンガを並べただけのものである。穴はない。近くに水路や溝がある場合もあるが,それはかなり贅沢なほうだ。そして,公衆便所の場合は,仕切りも扉も水もないのがふつうだ。インドでは,現在もまだ1千万個の乾式掘り込み便所があるが,それはひとえにチャンパベンをはじめとする人々が,それをきれいにする役割を担っているからだ。
ローズ・ジョージ 大沢章子(訳) (2009). トイレの話をしよう:世界65億人が抱える大問題 日本放送出版協会 pp.139
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