では,なぜ若者たちは振り込め詐欺に手を染めるのでしょうか。理由は簡単です。ほかの犯罪に比べて儲かり,かつ捕まるリスクが圧倒的に少ないからです。
振り込め詐欺がうまくいくと,1ヵ月に数百万円,数千万円という現金が容易に稼げます。そして,実際に逮捕されるのはほんの氷山の一角です。
奪った現金を元手にブティックや飲食店,不動産業といった表の事業を始める人間も少なくありません。実際,本橋刑事が追っていた事件でも,犯人逮捕の際はすでに足を洗って不動産業やブティックを経営していたケースが何例もあったそうです。
結果,そういう成功体験を先輩から聞いた若者が,一攫千金を夢見て次々に参入してくるのだとか。だから詐欺事件を働くというより,ちょっとブラック系のベンチャービジネスをやるような感覚なのでしょう。
藤野明男 (2012). 悪魔のささやき「オレオレ,オレ」:日本で最初に振り込め詐欺を始めた男 光文社 pp.194-195
PR