海外の実行犯で特に有名なのは,中国の主に福建省のグループです。彼らはもともと留学や出稼ぎで来日したカタギの連中でした。そして日本で振り込め詐欺のノウハウや犯罪のための人脈を確保し,帰国してから地元で同じ手口の犯罪を始めました。ですから中国でも2008年ごろから振り込め詐欺が問題化しはじめています。
次に彼らは福建省から東京へ電話を入れはじめました。東京の出し子グループとのパイプがあれば,現金の回収も容易です。中国の都市部における平均月収は2千元といわれています。日本円にするとわずか3万円です。東京で日本円を稼げば,あっという間に地元の大富豪になれるのです。
そのうち福建省から電話をかける孫も,日本人をあてがうようになりました。その日本人もたいていはインターネットカフェ難民です。東京でスカウトされて,「中国でおいしい仕事があるから」と福建省まで連れていかれます。そこでパスポートを取り上げられ,彼らの命ずるまま軟禁状態でひたすら日本へ振り込め詐欺の電話をかけさせられているのです。
藤野明男 (2012). 悪魔のささやき「オレオレ,オレ」:日本で最初に振り込め詐欺を始めた男 光文社 pp.197-198
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