ここで注意したいのは,前の「女性自身」の記事の見出しに「幼児虐待」という文字が使用され,「チャイルド・アビュウズ」とルビが振られている点である。現在の感覚では何ということはない見出しだが,実は「幼児虐待」「児童虐待」という単語がこの種の大衆誌に使用され始めるのがこの1988年から89年であり,それまでは「子殺し」「子捨て」「子いじめ」「せっかん」などさまざまな言葉で呼ばれていた現象が,ある1つの用語=問題系へと集約されていくのである。事実,前記の記事以外にも,この時期には「幼児虐待!ひどい!ストロー1本で土の中に埋められた坊や」(「女性セブン」1988年11月24日号),「告発幼児虐待!!園児が泣いている!」(「週刊女性」1989年6月6日号),「児童虐待・恐るべき実態!パパ,ママ,殺さないで!!」 (「週刊女性」1989年8月1日号)など,「幼児/児童」と「虐待」という言葉を並置した見出しが量産されている。
佐藤雅浩 (2009). 児童虐待とオカルト—1980年代女性週刊誌における猟奇的虐待報道について— 吉田司雄(編著) オカルトの惑星—1980年代,もう一つの世界地図— 青弓社 pp.183-207
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