科学と宗教を結びつけ,世界観の変革を促すグルーバルな視点を軸とした多様な動きは,1980年代を通して雑誌メディアにさまざまな話題を提供していった。早くも78年には「精神世界の本」ブックフェアが開催され,その後の展開を予告していたが,79年にはオカルト専門誌「ムー」(学習研究社)が創刊,80年には,のちにテレビメディアを席巻する霊能力者,宜保愛子が朝日放送のワイドショー『プラスα』に出演してテレビデビューを飾っている。
また,1980年代を通してメディアをにぎわせた宗教関連の事件,例えば「イエスの方舟」事件(1980年),「エホバの証人」輸血拒否事件(1985年),「真理の友教会」集団焼身自殺事件(1986年),世界基督教統一神霊協会による信者勧誘問題などは,日本の新宗教に対する特殊なイメージを確実に刻んでいった。こうしたなか,80年代後半になって,各種メディアはオカルトブームの復活を告げるのである。
一柳廣孝 (2009). カリフォルニアから吹く風—オカルトから「精神世界」へ— 吉田司雄(編著) オカルトの惑星—1980年代,もう一つの世界地図— 青弓社 pp.229-253
PR