「情報の洪水」という言葉がある。
これは,嘘だ。
情報があふれるほどあって,それに対処できない,という弱音の表現が「情報の洪水」という言葉を生み出した。「情報化社会」は「情報禍社会」なのだとか,「情報過多」によって短絡型思考,自閉症型反応,分裂症的反応をまきおこすという「情報ストレス理論」,環境汚染のひとつとして「情報汚染」を考えなくてはいけないという話まである。
こういう情報の受けとめかたは,新聞,雑誌,テレビなどから流れてくる,見かけ上,莫大な量に見える情報を消化しないといけない時代に遅れるという焦りの産物にすぎない。
しかし気をつけて見ればわかることだが,洪水のような情報の中味は,実は同じようなモノがあふれているだけの話で,どうということはないのである。
ひとつの事件,ひとつのテーマが話題になると新聞も雑誌もこぞって同じことを報道する。違いは味つけだけだ。最も確実な報道をした媒体の情報を引用し再編成している例の多いことも,週刊誌やテレビを見ているとよくわかる。
山根一眞 (1989). スーパー書斎の仕事術 文藝春秋 pp.41-42
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