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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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「ライフ・ボート」セッション

 有名な実習で「ライフ・ボート」というものがある。「沈没する船で,脱出用のボートに5人しか乗れません」という設定で,5人より多い受講生たちで「脱出する5人を,皆さんが投票で決める」というものだ。投票する前に,各人が「自分は生きたい」「生きる価値がある」とアピールする時間が与えられる。そこで,受講生たちが互いに「生きようとする意志が感じられない!」と責め合ったり,「自分はいいからほかの誰かを助けて」と発言した受講生が「偽善者!」と罵られたりする。投票の結果,脱出できないことになった受講生たちは親などに遺言を書き,「最期の1分」で自分の人生を振り返って「死んだ」ことにされてしまう。
 この最後のオチは,セミナー会社によっては「幸運にもほかの船が近くを通りかかり,全員助かった」となるバージョンもある。
 こんな様々な実習を絶叫したり泣きわめいたりしながら延々つづけていき,終盤では受講生同士が「すごく頑張った」「生き生きしている」などと互いに褒めちぎる実習がある。最期は「卒業式」。目を閉じて,セミナーの4日間を振り返る。
 「このすばらしい4日間を体験できたのは誰のおかげでしょうか。いま,いちばん感謝の言葉を伝えたい相手を思い浮かべてください。そして,目を閉じてください」(講師)
 目を開けると,その受講生をセミナーに勧誘した「紹介者」が花束を持って立っている。
 「おめでとう!」
 感涙とともに抱き合う。
 話に聞くだけだと,「いい歳こいたオトナがなにやってんだ?」と笑いたくなるかもしれない。しかし,朝から晩まで何日もこもりっきりで泣き叫んだりしているうちに,ほとんどの受講生がすっかり本気になっている。

藤倉善郎 (2012). 「カルト宗教」取材したらこうだった 宝島社 pp.69-70
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