19世紀には,いろいろな脳部位で,女性と男性に差異がないことが明らかになるのだが,科学者は,男性の知能の優秀さを示すと自分たちが信じているものが存在する場所を探して,さらに突き進んで研究を行った。たとえば,脊髄の長さを測定し,脊髄の長さに見られる性差がいかに知性に関連しているかについて,入り組んだ説明を組み立てたこともある。こうした活動の中で,科学者は身体の部位を測定するだけでなく,男女にさまざまなテストを実施した。女性が男性より成績がよいときには,こうした情報はたいてい男性の優越性の「証明」として解釈された。たとえば,ロマーニズは,女性が男性よりも早く正確に文章を読むことができるのを発見したが,この結果は女性が道徳的に劣っている証拠に変えられている。その時代の著名な科学者であるロンブローゾとフェレーロが,この性差を説明し,読みの能力は嘘をつく能力と一体であり,女性は男性よりも嘘がうまいと論じたのである。
P.J.カプラン・J.B.カプラン 森永康子(訳) (2010). 認知や行動に性差はあるのか:科学的研究を批判的に読み解く 北大路書房 pp.37-38
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