女性だけでなく,男性のホルモンも周期的なパターンをとっていることが示されてきたのに,ホルモンと行動が関連する可能性を検討した研究のほとんどすべてが,女性に焦点をあてているというのは,いったいどういうことなのだろうか。たとえば,女性は月経前には操縦技術が落ちる可能性があるので,飛行機の操縦を許可すべきではないと言われてきた。しかし,一部の女性が,PMSのような操縦操作を妨げる何かを抱えているというのが,仮に真実であったとしても,少なくとも,我々は——その女性たちの場合——彼女たちが飛行機を操縦すべきでない日を予測できる。しかし,男性の場合,血液検査を毎日行なってホルモンレベルをチェックしない限り,男性の操縦能力がホルモン要因によって妨げられる可能性があるのはいつなのかわからないのである。それゆえ,論理的には,この領域で多大な研究努力が費やされるとしたら,その目的は男性についてもっと理解するというものであるはずだ!興味をそそるのは,男性のホルモン周期についての報告や男性の行動周期についての報告が行われるようになったことである。実際,貨物鉄道の男性運転手の勤務日を28日周期で決めたところ,事故の件数は「他のいかなる方策によるものよりも,劇的に少なくなった」という。
P.J.カプラン・J.B.カプラン 森永康子(訳) (2010). 認知や行動に性差はあるのか:科学的研究を批判的に読み解く 北大路書房 pp.168-169
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