例えば,人物を撮るシーンで平気で首から上をフレームアウトさせちゃう。「首から下だけ撮ってくれ。首なしのまま歩くから」とカメラマンに指示すると,「それはまずい」と勝手に修正しちゃうんだよ。「いや,ここはそれでいいんだ」といくら言っても,カメラを上にあげてしまう。それが映画の常識といえば常識なんだけど,それに縛られている人も多い。
それを見ていると,日本人というのは,それまでのルールを壊して新しいものを創ろうという意識が低いのかなと思うね。違うこと,新しいことをやってみようという気はあまりないんだ。
しかも映画に限らず芸術の分野でこそ,どんどん新しいことにトライしていかなければいけないのに,かえってそういう世界の方が「これまでの常識や伝統を守る」という意識が日本では強いよね。もっともっと自由なことをやるべき業界なのに,慣習や常識に囚われている。
ビートたけし (2012). 間抜けの構造 新潮社 pp.156
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