理由がないと,人間は動けないんだけど,一番肝心なことは絶対にわからない。それはこの世界に生まれてきた理由だよ。生まれて死ぬことに理由なんてないだろう。なんで生まれてきたのかなんて,いくら考えたって答えが出るわけじゃないんだから,生きているうちに理由がわからないことが起きても,それが当たり前だ。
でも人間は弱いから,なにか理由がほしくなって,それが本当かどうかわからなくても,宗教や占いをとりあえず信じようということになる。
基本的に生きている意味なんてわからない。何でおいらは生きているのか,それもなぜこの時代に,この場所で生まれてきたのか。「人間って何だ」「宇宙って何だ」と考えてもわからないことばかり。
だからこそ,人生というのは“間”だと思ったほうがいいんじゃないか。我々の人生というのは,生きて死ぬまでの“間”でしかない。生まれたときの“点”と死ぬときの“点”があって,人生はその間のことに過ぎない。見つかるはずのない「生きている理由」を探すよりも,そう思った方が楽になる。おいらなんかはそう思うんだけどね。
ビートたけし (2012). 間抜けの構造 新潮社 pp.185-186
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