非注意による見落としを少なくするには,証明済みの方法が1つある。予想外のものやできごとを,できるだけ予想のつくものにすることだ。自転車および歩行者が遭遇する事故は,車がバイクを見落としてはねてしまう事故と共通点が多い。カリフォルニアの公衆衛生コンサルタント,ピーター・ジェイコブセンは,歩行者および自転車が遭遇する事故の割合を,カリフォルニアの各都市とヨーロッパ数か国について調べた。2000年の1年間に自転車と歩行者がはねられて負傷や死亡につながった事故の件数を,百万キロメートル単位で都市別に統計をとったのだ。パターンは明確で驚くべきものだった。歩行者と自転車が事故に遭う件数は,この手段による移動がもっとも多い都市部でもっとも少なく,自転車や歩行者が少ない地域でもっとも多かった。
クリストファー・チャブリス&ダニエル・シモンズ 木村博江(訳) (2011). 錯覚の科学 文藝春秋 pp.32
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