知識の錯覚を避けるためにまず必要なのは,自分の計画はほかに類がないという思い込み,その計画にかかる経費や時間に対する自分の予測が正しいという思い込み,それをすべてやめることだ。やめるのは,むずかしいかもしれない。なぜなら自分の計画については,ほかの誰よりもあなたがよく知っているはずだから。だが,この「自分が知っている」という感覚が,誤りのもとである。その感覚があるため,計画について正確に見積もれるのは,もっとよく理解している自分以外ないと思い込んでしまうのだ。かわりにお勧めしたいのは,ほかの人や組織が立てた同様な計画で,すでに完成したもの(あなたの計画に類似したものほどいいことは,言うまでもない)を探しだすこと。そしてそれらの計画にかかった実際の時間や経費を参考にして,自分の計画に予測を立てること。自分の内部にしまってあるものに対して,こうした“第3者の目”を取り入れると,計画に対する見方が大きく変わってくる。
クリストファー・チャブリス&ダニエル・シモンズ 木村博江(訳) (2011). 錯覚の科学 文藝春秋 pp.165
PR