小学校から大学までの数学の先生の集まっているところで,座興に,
32.43×84.21=2730.9303
について,
1) 273.09303 2)2730.9313 3)2730.9309 4)2730.9243
ぐらいの答を,10点満点で採点してもらったことがある。
おもしろい現象は,小学校の先生が一番きつくって,5点以上はつけない。大学の先生だと,2)〜4)はたいてい7点か8点,甘い人になると,10点をつけてしまう。もっと甘い人だと
32×84=2688
を答にしていても5点ぐらいつける。これに反して,逆転するのは,小数点を打ちまちがった1)で,小学校の先生が4点か5点,大学の先生が0点から3点,という傾向がある。
べつに,これは採点基準があるわけではない。最後が3×1で3にならぬのはおかしい,なんて採点ほうだって可能である。大学の先生でも,解析か数論かで,いくらか気分が違ったりする。それでも,小学校では,小数に誤差の気分があまりなく,大学に向かって,誤差の気分がついていく,といった傾向ぐらいは見える。計算のアルゴリズムの正確さか,数に対する感覚か,そのどちらかを重視しているかということもある。
森 毅 2006 指数・対数のはなし 異世界数学への旅案内[新装版] 東京図書 Pp.25-26
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