変化の個人間での異質性についての疑問を,各個人の変化の軌跡の重要なパラメータということばで表現し直すことで,問題をより特定化して単純化をはかることができます。疑問を「変化には個人差があるでしょうか,もしあるとすれば,どのようにでしょうか」と表現する代わりに,「切片には個人差があるでしょうか,傾きにはどうでしょうか」とするのです。観測された平均的な変化のパターンについて知るためには,推定された切片と傾きの標本平均値を検討する必要があります。これらはその標本の初期値と標本全体の平均的な1年間の変化率に関する情報を提供してくれます。観察された変化の個人差を検討するためには,標本の切片と傾きの分散と標準偏差を検討します。これらは,その標本の初期値と変化率の散らばり具合についての情報を提供してくれます。そして,観察された初期値と変化率の関係性について検討するため,その標本の初期値と変化率の共分散あるいは相関を検討することができます。
ジュディス・シンガー,ジョン・ウィレット 菅原ますみ(監訳) (2012). 縦断データの解析I:変化についてのマルチレベルモデリング 朝倉書店 pp.35
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