じっさい,ステレオタイプ脅威の実体を明らかにすることで,デリケートな学生たちをその呪縛から解放できるらしいのだ。女性は数学が苦手であるということを,数学能力の男女差に関する研究の一環として提示したあとで,統計学を専攻する女子学生に数学のテストを受けさせたところ,一般的な傾向どおり,男子学生より成績が劣っていた。しかしもう1つのグループの学生たちには,ステレオタイプ脅威とその影響について事前に伝えておいた。そして女子学生たちは,こう助言された。「このテストを受けている間に不安を感じるとすれば,それは世間に広く流布している,女性の数学的能力に関するステレオタイプが原因のプレッシャーから生じるもので,実際のあなたの能力とは関係ないと頭に留めておくことが重要だ」するとそのような説明を受けた女子学生たちの成績は,男子学生とまったく変わらなかったのだ。世の先生がたには,このことを肝に銘じておいていただきたい。
コーデリア・ファイン 渡会圭子(訳) (2007). 脳は意外とおバカである 草思社 p.208-209
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