骨のコラーゲンが働かなくなる変異は,「骨形成不全症」という疾患を引き起こす。この病気は少なくとも4種類に分けられるが,なかには幼少期に死亡するものもある。最も特徴的なのは,骨が極端に脆いことだ。このため「ガラスの骨の病」として知られる。コラーゲンは階層的に作られているので,この変異は破壊的な影響を与える。コラーゲンのタンパク質は,3種類のペプチドからなり,このペプチド——アミノ酸の鎖——が寄り合わされて三重らせんを作っている。そしてこの三重らせんが集まって膨大な数の線維になり,織り合わさって,結合組織や軟骨を作る。それぞれのペプチドは別々の遺伝子にコードされているが,変異した遺伝子がたった1つあるだけで,かなりの数の三重らせんを破壊し,ひいては線維を,そして骨をめちゃくちゃにする。
アルマン・マリー・ルロワ 上野直人(監修) 築地誠子(訳) (2006). ヒトの変異:人体の遺伝的多様性について みすず書房 pp.139
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