オレゴン大学の心理学者マイケル・ポズナーは,よく工夫されていて簡単に実施できる一連の実験を開発した。この実験はパソコンで行えるうえ,それぞれ違った種類の注意を必要とする。その1つでは,観察者はパソコンの画面に小さな四角いターゲットが見えたらすぐにボタンを押すように求められる。ターゲットが提示される前に警告信号は出ないので,これは「刺激駆動型の注意」が必要な課題である。もう1つは,ターゲットが提示される前に,三角形の警告刺激が出される。しかし,どこに出るかは分からない。警告刺激は観察者の覚醒水準を上げることになる。3番目のものは,「コントロールされた注意」を見るものだ。ターゲットが提示される数秒前に矢印が画面に提示され,すぐにターゲットが出るという警告に加えて,提示される位置も示す。観察者は注意をコントロールして,ターゲットが出てくると予想される画面位置に注意を向けることができる。
このようなテストで反応時間を計測することで,科学者は違った種類の注意について定量化を行ってきた。面白いことは,これらの注意はかなり相互に独立しているということである。このような注意の間の組織的な独立性が示しているのは,注意のタイプごとに問題が起こりうるし,それは必ずしも,他の種類の注意にそれほど影響しないということである。
ターケル・クリングバーグ 苧阪直行(訳) (2011). オーバーフローする脳:ワーキングメモリの限界への挑戦 新曜社 pp.27
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