コスト面でのシナジー効果については,つぎのような問題を念頭に置きながら検討するとよい。
・あなたが削減できると期待するコストの多くは,ただ別の予算に回る公算が大きい。ある部門で人員をカットしても,彼らが有能で,会社が失いたくない人材ならば,他のどこかに移されるだけだ。
・他にも多くのコストが,合併につきものの妥協のせいで残りつづける。ある業務がどこか別の都市にある会社に統合される場合,そちらへ移りたがらない社員が出てくるかもしれない。その人材を失いたくなければ,あなたが折れるしかない。だからあらかじめ,この種の妥協はきっと起こるということ,その人物を今の場所に置いておくためにオフィスのスペースや旅費などの余分なコストがかかるということを,計算に入れておく必要がある。
・社内には,コスト面でのシナジーが実現されないほうが既得権を守れる人も多い。販売員は自分たちのテリトリーを守り,管理職は自分たちの専門領域を守る。統一されたやり方におとなしく従おうとはしないだろう。誰が,どんなふうに抵抗するかを見越してリストにしておけば,期待されるコスト削減の数字から,実現しない分を割り引くことができる。
ポール・キャロル,チュンカ・ムイ 谷川 漣(訳) (2011). 7つの危険な徴候:企業はこうして壊れていく 海と月社 pp.36-37
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