こうしたコア事業の過大評価は,成功している会社で起こりやすい。その根底にあるのは,スタンフォード大学のウィリアム・バーネットとエリザベス・ポンタイクスの言う「赤の女王症候群」だ。この名の由来はルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』で,赤の女王が「その場にとどまるためには,全力で走らなければいけません」と言うくだりからきている。ビジネスで赤の女王症候群を起こすのは,自分たちの置かれた環境に適応しようと必死になっている会社だ。必死だからこそ成功しているのだが,そこに適応しているということは,異なるルールで動く他の市場には準備ができていないということでもある。しかも,彼らはそれに気づいていない。だから,ある市場で成功している会社ほど,隣接市場でも成功できると過剰な自信をもってしまう。
ポール・キャロル,チュンカ・ムイ 谷川 漣(訳) (2011). 7つの危険な徴候:企業はこうして壊れていく 海と月社 pp.139
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