どんな会社も,市場調査からは自分の知りたいことしか知ろうとしないし,それはずっと昔から変わらない。ウエスタン・ユニオンは競合する可能性のある電話事業について,1876年にこんな結論を出している。「この“電話”なるものは,通信の手段としては欠点が多すぎ,まともに考慮するに値しない」。IBMが事務機器の売上に依存していた時期の会長トマス・ワトソン・シニアは,1943年にこう語っている。「コンピュータの世界市場は5機というところじゃないだろうか」。ミニコンピュータの大手であるディジタル・イクイップメントの創業者ケン・オルセンは,1977年にこう言った。「誰かが家庭でコンピュータを持ちたいと思う理由が見当たらない」。
しかしIBMは,1980年代にはすっかり大型コンピュータの売上に頼るようになっていた。そして1981年に自社PCを投入する直前には,この製品が寿命を迎えるまでにPCの市場はほぼ20万機になっているだろうと予想した。現在HPとデルは,3日か4日でそれだけの数を売っている。
ポール・キャロル,チュンカ・ムイ 谷川 漣(訳) (2011). 7つの危険な徴候:企業はこうして壊れていく 海と月社 pp.171-172
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