構想段階で生じる大きな誤りを避けるには,マイケル・ポーターの「5つの力」分析など,戦略設定への厳格な手法をきちんと守ればいい。ところが実際には,厳格な手法をとるのはきわめて難しいことがわかっている。理由は,以下に挙げる人間の本来的な傾向のためだ。
・人はすべての情報を評価するずっと前から,ひとつの答えに狙いを定めている。
・人は元来,抽象概念を扱うのが得意でなく,多種類の情報に対して客観的になることが難しい。
・人はある答えに向かいはじめると,その答えの正しさを確認しようとし,自分がまちがっているという可能性を受け入れにくくなる。
・人はグループの希望に従おうとする。特にそのリーダーが強い人間であれば,反論を唱えず,ただ受け入れる。
・人は誤りからじゅうぶんに学ぶことがない。おおむね自信過剰で,自分の失敗を正当化する精巧な防御メカニズムをもっている。企業戦略を任されるような頭の切れる人たちほど,過ちを認めず,ミスから学ばない傾向がある。
ポール・キャロル,チュンカ・ムイ 谷川 漣(訳) (2011). 7つの危険な徴候:企業はこうして壊れていく 海と月社 pp.215-216
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