ディズニー・イマジニアリングの幹部ジョー・ローディは,自然に近い環境に野生動物を放した遊園地を造りたいと考え,パワーポイントによるプレゼンなど,企画を通す際にはつきものの面倒な手続きをひと通りこなしたが,手ごたえは今ひとつだった。そこでローディは一計を案じた。最終会議で,当時のCEOマイケル・アイズナーが「生きた動物を見てスリルを感じるというのが,まだぴんとこないな」と言うと,彼は会議室の入口まで歩いていき,ドアを開けた。入ってきたのはベンガルトラだった。ごく細い綱でつながれ,若い女性ひとりに抑えられた状態で。アイズナーは即座に“スリル”を理解した。アニマルキングダムは1999年に開園し,大成功を収めた。今も大勢の人たちが,生身のエキゾチックな野生動物を見るスリルを味わっている。
ポール・キャロル,チュンカ・ムイ 谷川 漣(訳) (2011). 7つの危険な徴候:企業はこうして壊れていく 海と月社 pp.218
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