悪い知らせを控え,友好的な関係を保とうとする傾向は,企業ではつぎのような形をとる。
CEO(および,あらゆるレベルの管理職)がある計画の欠陥を見つけようと思ったら,信頼する相談相手何人かにその案を見せて回るかもしれない。だがそうした相手はみんな,部下ではなくても,おそらく彼を敬愛している,たとえ異論があっても,それを隠そうとする見込みが高い。彼らはきっとこう言うだろう。「すごく気に入りました。それもいい,あれもいい,この別のところもいい。X,Y,Zについては考えたほうがいいかもしれませんが,全体的にはとてもいいと思います」。顧問役たちの本音はこうだ。「おやおや,これは困ったことになるぞ。Xだと身の破滅だ。Yでも,Zでもだ」。だがCEOの耳に届く言葉はこうだ。「いや,じつにお見事です」。そのCEOは,あえて反論を求めた自分の強さを自画自賛さえするだろう。
ポール・キャロル,チュンカ・ムイ 谷川 漣(訳) (2011). 7つの危険な徴候:企業はこうして壊れていく 海と月社 pp.244
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