直接的な方法のひとつは,ケネディ大統領が公に悪魔の代弁者の役割を務める責任と権威を弟に与えたように,誰かをこの任に指名することだ。これには2つのやり方がある。ひとつは,一人の人間にこの役割をまかせるもので,本人は時間がたつほど効率的なやり方を学んでいく。もうひとつは,たとえば懸案の問題の性質によって,グループ内で役割を交代していくというものだ。そうすればひとりの人物が「いつも反対してばかりのやつ」という烙印を押されずにすむ。私たちとしては,恐ろしい「抗体」ができるのを防ぐために,後者を推したい。
もっと望ましいのは,IBMのワトソンがやったように,会社に悪魔の代弁者が自然と生まれるような組織なり文化なりを築くことだ。そうした特徴の核心となるのが,権力に向かって事実をつきつけることの認可である。組織内の誰でも,上位の人間に対して深い懸念を口にできるということだ。そうなるためには,一般の社員たちに,これは口先だけでなく本気の認可だとわからせる意欲と手際が必要になる。
ポール・キャロル,チュンカ・ムイ 谷川 漣(訳) (2011). 7つの危険な徴候:企業はこうして壊れていく 海と月社 pp.258
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