ルー・ガースナーが1993年にIBMのCEOに就任したとき,最初にやったのはちょっとした改革だったが,それは会社を思考の型から救い出すのに大いに役立った。彼はOHP(オーバーヘッドプロジェクター)を禁止したのだ。
IBMが長年のうちに衰え,ワトソンがつくった組織が形骸化するうちに,同社は異常なほどOHPに頼るようになっていた。1970年代のあるCEOなど,OHPを自分のマホガニーの机にくくりつけていたほどだ。大きな会議では,メインのOHPが十数台,予備に10台,予備の予備にまた10台用意されるという有様だった。OHPなしのIBMなどとても考えられないと。しかしガースナーは譲らなかった。結果として経営チーム相手に,以前とはちがって筋書きのない,徹底した対話ができるようになった。
ポール・キャロル,チュンカ・ムイ 谷川 漣(訳) (2011). 7つの危険な徴候:企業はこうして壊れていく 海と月社 pp.262-263
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