自らの芸に対しては,容赦無いツッコミとダメ出しが飛んできます。お笑いは「工業製品的」です。自我だけで勝負できない世界なのです。芸人は,楽屋などでツッコミを受けることによって,自我の不要な部分を削っていきます。そういう意味で,ツッコミを受けることによって救われたことも少なくありません。
翻って一般の人に置き換えてみると,仕事でも何でもそうですが,上司からダメ出しをくらったり,叩かれて修正されたり,自我を削られたりすることは喜ぶべきことでしょう。「自分らしさ」がなくなってしまうのではないかと思う人もいるかもしれませんが,そうではありません。むしろ,叩かれたり,削られたりすることによって「自分」が形作られていくと思うのです。
今は,誰もが自我を肥大させてしまっています。みんながツッコミをしたいと思うのは,ツッコミをすることによって肥大した自我を守ろうとしているわけです。しかし,ツッコミを受けることで,自我をシェイプアップしていくことも覚えておくといいでしょう。
一度,自分の「しょうもない部分」を認めてあげたほうが楽になるのです。そこからさらに進んで「しょうもない部分」を持つ自分を「ボケ」として周囲に提示し,周囲からツッコミを受けてみる。
これが「自我のダイエット」です。
槙田雄司 (2012). 一億総ツッコミ時代 星海社 pp.72-73
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