みんながみんな「メタ的」で「評論家的」のようになってしまいました。そこでは,あらゆる物事に対して「良い/悪い」という「評価」をします。日本ではフェイスブックでも「好き!」ではなく「いいね!」です。評価をしているわけです。しかし,この「評価目線」は息苦しさを増長させる方向にしか作用しないのではないかと私は考えます。
あらゆる物事に対して「良い/悪い」という評価をするのではなく,もっと「好き/嫌い」という感情を表現してみてはどうでしょうか。
多くの人は,何かを「好き」あるいは「嫌い」と表明しているようで,あまりしていません。「嫌い」とは言わずに「ダメ」と言う。「良い/悪い」や「アリ/ナシ」もそう。最近では「これはひどい」なんていう便利な言い方もあります。
私は「これは良い」「これは悪い」と言うのではなく,あえて「これは好き」「これは嫌い」と言っていきたいのです。「良い/悪い」というような超越的な言葉,評論的な言葉,神のような上から目線の言葉というのは,メタ視点的な言葉です。
普通の人にとって「好き/嫌い」を表明することは,実は怖いことです。なぜなら,「好き/嫌い」を語ることによって,自分自身が剥き出しになるからです。
一方,「良い/悪い」「アリ/ナシ」などの表現は,自分の嗜好はいったん脇に置いておいて,誰かの評価や大して根拠のない判断基準を借りてジャッジをしているだけなのです。
槙田雄司 (2012). 一億総ツッコミ時代 星海社 pp.132-133
PR