分類学者とはどのような人種だろうか。(1)種わけ,(2)生物の系統関係の推定,(3)生物のカタログ作成。この3つが彼らの主な仕事である。
この最後のカタログ作りという仕事が,分類学者をきわめて特色ある存在にしている。生物の名前を整理し,未記載種には名前を与え,情報の引き出しを容易にするようなカタログを作ること。これは,経験的知識の増加という観点からはさほどの意味はないかもしれない。しかし,実用上は非常に有用である。
カタログ作りのために分類学者は,まず対象とする分類群に関する文献を徹底的に収集しなければならない。また,もちろん,できるだけ多くの材料を集め,形態を調べやすいような標本を作成する必要がある。これらの作業は時間とエネルギーがかかるけれども,逆に時間とエネルギーをかけさえすれば,まずまちがいなくある程度の成果が得られる。良くいえば堅実な,悪く言えば野心に乏しい研究なのだ。
青木重幸 (1984). 兵隊を持ったアブラムシ どうぶつ社 pp.18-19
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