実際にどうなるのか。食塩と砂糖を使って,台所で実験してみた。協力してもらったのはチャコウラ2匹。
テーブルの上に黒い髪を敷き,全長5センチほどのチャコウラを置く。上から姿が見えないくらい食塩をふりかける。1分で隊長は2.5センチに縮まり,体は塩を含んだ大量の粘液で覆われた。5分後,塩を洗い落とす。塩を含んだ粘液は体の周囲にびりつき,離れない。15分後,水を含んだスポンジに載せ,1日回復を待ったが,固まったまま。どうやら塩をかけた直後に絶命した模様だ。体内の水分の欠乏,それに食塩を含んだドロドロの粘液が呼吸孔をふさいだことが死因と思われる。
やはり全長5センチほどのチャコウラを,黒い紙の上に載せ,姿が見えなくなるまで,砂糖をかける。1分後,砂糖からはい出す。尻尾の方が少し水分を奪われた模様だが,姿はほとんど変わらない。2分後には,平常の歩き方に戻った。
小麦粉はどうなのだろう。数日後,テーブルにラップを張り,全長5センチほどのチャコウラにたっぷり小麦粉を盛ってみた。チャコウラは,粉の中であっちこっちに方角を変えながら,8分30秒後にはい出してきた。体の後部がやや細くなったものの,命に別状はなかった。
足立則夫 (2012). ナメクジの言い分 岩波書店 pp.66-67
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