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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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光が強ければ影も

 そう遠くない将来,あなたの「すべての」DNAの塩基配列,すべての遺伝子のタイプが廉価で読み解かれるようになるでしょう。それによって,あなたの健康にかかわるさまざまな側面について,遺伝子の情報から理解され,予測され,コントロールされるようになるでしょう。そうすることによって病気や不健康で苦しむ人々は減り,今とは比べものにならないほどの健康が維持され,人々の幸福が増進される医学的ユートピア,「すばらしい新世界」の到来が思い描かれます。
 これはとりもなおさず,特定の人物について遺伝情報から理解することが当然のことになる世界です。パーソナルゲノムが当たり前になった時,私が「遺伝情報の人格化」とよぶ状況がおとずれるでしょう。こんにちでも,収入や学歴に関する情報は,それがその人の人格を評価するときに好むと好まざるとにかかわらずついてまわるものです。その意味で資産情報の人格化,学歴情報の人格化は私たちの世界ではすでに進んでいます。それに遺伝情報が加わるというわけです。
 資産や学歴は自分の意志や努力,時代状況や運などによって,ある程度,後天的に変わる/変えることができます。しかし遺伝的組成は一生変わることがありません。ゲノム科学に携わる人たちは,生まれたときにわかるその人の全ゲノム情報をICチップに入れて持ち歩き,いざというときの治療に役立つようにするなどということも考えています。結婚するときに,相手の遺伝情報は,いまの学歴や収入とおなじように,いやそれ以上に,少なからぬ人々にとって「気になる」情報になるでしょう。ユートピアのもつ光は,その光が強ければ強いほど,そこにできる影も暗く濃く深くなる可能性があります。

安藤寿康 (2012). 遺伝子の不都合な真実:すべての能力は遺伝である 筑摩書房 pp.111-112
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