ところでいったいぜんたい科学とは何かということになると,「科学」という言葉は普通,次の3つのことのどれか1つ,あるいはその混ざったものを意味しているようです。ここで僕らはあまり厳密でなくてもいいでしょう。あんまり厳密すぎるのは,必ずしもいいことではありませんから。さて科学の意味ですが,ある場合にはものごとを突きとめるための,特殊な方法のことを指していることもあります。またいままで突きとめたことを積み重ねた知識の集成を意味することもあり,何かを突きとめた結果できるようになる新しいこと,あるいはその新しいことの実行そのものを指していることもあるのです。この最後の分野はふつう科学技術と呼ばれていますが,タイム志の科学欄をみると,半分は新しく発見されたこと,あとの半分はどんな新しいことができるようになり,あるいは現在すでになされつつあるかが書いてあります。だから世間一般の科学の定義は,一部分,工学でもあるわけです。
R.P.ファインマン 大貫昌子(訳) (2007). 科学は不確かだ! 岩波書店 p.5
PR