「強い意志があれば,自分の中で意思統一ができるはず」というのは幻想なんですよ。
もっと現実的に,リアルに自分を観測してみる。
僕らの心のモデルとして,自分の中に複数の自分がいる。で,その1人がたとえばしょっちゅう食べたがるとか,「決心」社長の監視を盗んで食べたがる。
「決心」社長の監視がゆるい時,つまり理性がふっとゆるんだ時に,こっそりとポテチの袋開けてパリパリパリパリ食べる。社長に見つかった瞬間に,「いえいえ」とか言って,あっという間に隠れるんですよ。
どうですか?みなさんが「自分の決心をつい破っちゃう時」って,こんな感じじゃないですか?
同じように,何かルール違反をついついしちゃう人というのは,多分,そのルール違反を自分でやってる意識があまりないんですね。心の中に,「いや,それぐらいいいじゃないか」という自分がいる。よく海外アニメに出てくる「頭の両側で天使と悪魔がささやく」,あれと同じです。
学級委員会と言ってもいいんですけども,自分というのは所詮,統一がとれてない中小企業の社長にすぎない。
だから,自分が決心したからといって思い通りに何かできないのは当たり前。
「どういうふうに決心すればいいんですか」とか,「どういうふうに決意すればいいんですか」って聞く人もいるけれど,決心や決意ではどうにもならないんです。
それは社長が決心して社員に大号令かけてるのとまったく同じで,社員は社員でその時は「そうだな」と思うかもしれないけど,それだけなんです。
家へ帰る途中で「社長,何言ってんだよ」と思うかもしれないし,飲みに行ったら,社員の中の有力なやつが,「社長が言ってることもわかるけどさあ」
この「さあ」と言った瞬間にみんなが「やっぱり?」「そうだよね?」ってなるわけですね。
なので,「決心」というのは長持ちしない。
岡田斗司夫・FREEex (2012). オタクの息子に悩んでいます:朝日新聞「悩みのるつぼ」より 幻冬舎 pp.131-133
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