昔のように「難関校を出ていれば,基礎学力についてはある程度粒ぞろい」というような考え方は,企業の採用担当からは潰えていくことになった。
そこから,企業側は「名ばかり名門大学生」対策に追われることになる。
まだ内定にはほど遠い段階で,筆記試験を課す企業が増えた。その上,従来の言語(国語),非言語(算数)だけでなく,一般常識も加える企業が増えている。エントリーシート(応募趣意書。以下ES)の内容が,自己PRや応募動機といったありきたりなものから,時事問題や科学分野の話などに振られだしたのも,理由の一端はそこにある。
さらに,応募の早い時期からグループディスカッションにより,思考力,論理性などを厳重にチェックするのもごく一般的となっている。みな,「名ばかり名門大学生」対策の一環ともいえるだろう。
近年,とみに「就活の厳選化」が叫ばれるようになったのはこうした経緯があるからだ。
ただ,それを知らない大人たちの間では,「採用が厳選化したのは,高いレベルの“リーダーシップ”“問題発見能力”“コミュニケーション能力”が必要とされるからだ」などととらえられている節がある。
たしかに,そうした言葉を語る企業の採用担当も多い。しかし,年功序列型が多い大手企業が,本気でそんな「出る杭」ばかりを採用するとはとうてい思えない。そんな「ハイレベル」な基準は,企業により好き・嫌いが分かれるところなのだ。
海老原嗣生 (2012). 偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 朝日新聞出版 pp.32-33
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