「といったって,受けてみなければwからないじゃないですか。人気企業を受けるのに別にお金がかかるわけでもないんだから」
そう,就職ということに関しては,まるで相場観がないのが普通の学生なのだ。
ひるがえって考えてほしい。少し野球がうまいからといって,「受けて見なければわからないから」とプロ野球選手を志望する学生はまずいないだろう。彼らは,リトルリーグで夢砕かれ,中高では名門校に入れずまた挫折し,名門校に進んでも甲子園には届かず……。そう,大学に入るまでに何度も砂を噛む思いをしている。だから,相場観が見についているのだ。
同じようにちょっとカワイくて歌がうまいからと,AKB48に入れはしないことを多くの女子学生はわかっている。地方の高校で少しデキるからと,東大を受ける学生もいない。皆,小さな頃から何度も挫折を経験し,「ちょっとやそっとじゃ無理」ということがわかっているからだ。
こうした「相場観形成」がまったくなされず,若者は大学3,4年生になって初めて就職の厳しさを知る。
こんな状態で,親やキャリアカウンセラーが,口を酸っぱくして「社会はそんな甘いもんじゃない」「多くの人が中堅中小企業で働いている」と説得しても,やはり学生は納得はしない。だから,狭き門の向こう側にいる企業は,対応できないほどの大量の応募者と対峙することになる。かくして企業は,学校名や学部名などの「レッテル」による選別をするしかなくなっていくのだ。
海老原嗣生 (2012). 偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 朝日新聞出版 pp.48-49
PR