最大の問題は,やはり就職市場の構造というものをマスコミや識者,果ては行政までよく理解せずに対策を講じることにあるのだろう。
人気企業はとてつもなく狭き門だ。それは確かに好景気になれば2倍程度には広がるが,それでもやっぱり狭き門だ。この雇用吸収力の乏しい分野をどうこういじったって,まったく就職氷河は溶けやしない。
にもかかわらず,多くの人が,人気企業さえどうにかすれば,就職全体が大きく変わると考える。そして,経団連に代表される大企業も批判の矢面に立つのがいやだから,お付き合いでおためごかしを取り繕う。
それじゃどうにもならないことに,なぜ気づかないのか。
就職市場の構造は圧倒的多数が,中堅中小企業に就職する,ということにある。
しかし,このおそろしいほどの数と数のぶつかりあいが,ミスマッチを生む。一昔前のように,大卒はエリートでそこそこの企業に入れた,という少数精鋭時代とは話が異なるのだ。
労働力調査や企業センサスで調べれば,雇用者の7割強は中堅中小企業で働いていることが確認できる。大学生の就職も,この本の冒頭で書いた通り,6割強が中堅中小に決まる。構造自体は相似形になっている。
そして,7割と6割の差,この1割分が就職無業となっている。そう考えた上で対策を練れば,もっともっと就職問題は良い方向に進んでいくだろう。
この市場構造に気づかないでいると,永遠に就職氷河は消えない。
海老原嗣生 (2012). 偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 朝日新聞出版 pp.193-194
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