この自己分析が本格的に広まったキッカケは杉村太郎氏(故人)が手がけた『絶対内定』(当初はマガジンハウス,現在はダイヤモンド社が刊行)だといわれている。この本はベストセラー,ロングセラーとなった。発売されたのは90年代前半で,まさに「就職氷河期」である。状況が苦しいなか,自分の強みを明確化し,未来を強く構想する手段として自己分析は急速に広がっていったのだ。
そう,自己分析が必要になった第1の理由は,「就職氷河期と重なったため」である。
バブルが崩壊し,採用数も減少,採用基準が厳しくなった状態では,ほかの人材との違いをアピールしなくてはならない。皆が企業の求める人物像に合わせた無難なアピールをするというのは当時の学生にもあった傾向だ。そんななかで,自分がいかにその企業に合っていて,活躍できるかをアピールするためのネタ探しに自己分析が活用されたといえるだろう。
もうひとつの理由は,「自分探し」である。昔の若者に比べ,「なぜ,働くのか」といった自己実現としての職業の意味合いが強くなった。単に内定のためだけでなく,人生を自分らしく生きるためには「自分を知る必要がある」と考えるようになったからである。
結果,自分の夢を叶えるためにも,自分の内面にある資源を棚卸しし,何が強みで何が足りないのかを明確化するようになったのだ。
常見陽平 (2012). 親は知らない就活の鉄則 朝日新聞出版 pp.76-77
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