一方で,私は採用担当者をしていたころから,学生の自己分析について疑問を抱いていた。学生たちは,次のような自己分析の罠にはまっていないかと危惧していたのである。
1.自分自身に成功体験など「すごい体験」がなくあせってしまう。自信をなくしてしまう
2.志望先に合わせた,都合のよい自分を演じてしまう
3.聞こえのよいことだけを中心に,無難に,きれいにまとめてしまう
4.自分の体験を適切に評価できない(極端な過大評価,過小評価をしてしまう)
5.学生同士でアルバイト,サークルなど体験が似通っており,一見すると差がつかない
6.自己分析が目的化してしまい,それに取り組んだだけで満足してしまう
7.独りよがりになってしまっていて,客観性に欠ける
なんとなく大学に入り,挫折を経験せずに育ってきた20歳前後の若者に,自己分析などさせても自信をなくすだけではないか。そして,これまでの自分の殻に閉じこもってしまうのではないかと疑問に思っていたのだ。
しかし,そのあとに気づいた。たしかに,人間にはそれぞれ独自の価値観,行動特性,思考回路というものがあり,深く掘り下げていくと,なんでもないようなことのなかに,本人の強みを見出すことができるということである。
常見陽平 (2012). 親は知らない就活の鉄則 朝日新聞出版 pp.77-78
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