1950年代後半から60年代初期にかけて,バーモント州立病院から269人の慢性統合失調症患者(大半が中年)が退院し,地域社会に戻った。20年後,コートニー・ハーディングはこの集団の患者168人(生存していた者)と面談を行い,34パーセントが回復していること——すなわち「症状がなく自活し,密接な人間関係を築き,働くかその他市民として生産的な活動に従事し,身の回りのことを自分でこなし,総じて充実した人生を送っている」——のを確認した。これは,1950年代に絶望的とみなされていた患者としては,驚くほど良好な長期的転帰であり,ハーディングがAPA Monitorに語ったところによると,回復した患者には1つの共通点が見られた。彼らは全員,「薬の服用をかなり以前に中止していた」のだ。ハーディングは,統合失調症患者は「障害薬物治療を続けねばならない」というのは「神話」であり,実際には「永久に薬が必要な患者はごく一部かもしれない」と結論づけた。
ロバート・ウィタカー 小野善郎(監訳) (2012). 心の病の「流行」と精神科治療薬の真実 福村出版 pp.159
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