告白が次から次に飛び出した。むろん精神医学界には,双極性障害への抗うつ薬使用を裏付ける「証拠基盤」が存在したが,ポストによると,製薬会社が実施した臨床治験は「われわれ臨床家には実質的に何の役にも立たない。……それは,われわれが本当に必要とする知識,すなわち予想される患者の反応や,初回治療で反応が得られなければ次の反復治療はどうすべきか,どれくらい治療を続けるべきかといったことを教えてくれない」。実際に「抗うつ薬のような低質な治療法に反応を示す」のは,一握りの患者にすぎない,と彼は付け加えた。抗精神病薬を中止した双極性障害患者の再発率が高いことを示した,製薬企業の助成を受けた近年の臨床知見に関しては,こうした研究は理論的には長期的服用の必要性を示す証拠となるものだが,研究自体が「[プラセボ群の]再発を引き起こすデザインだった」とグッドウィンは語る。「この研究は,薬がやはり必要であることを示す証拠ではない。薬に適応した脳が突然変化に直面すれば,再発するということを示す証拠なのだ」。ポストもそう言い添えた。「抗うつ薬の誕生から50年経った今,われわれはいまだに双極性うつ病の治療法をよく分かっていない。新たな治療アルゴリズムが必要なのに,それがまだ考案されていないのだ」。
ロバート・ウィタカー 小野善郎(監訳) (2012). 心の病の「流行」と精神科治療薬の真実 福村出版 pp.262
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