もし嘘や隠し立てがなければ,流行病はとっくの昔に防げていたかもしれない。長期的な転帰が一般に公開され議論されていれば,社会に警鐘を鳴らすことができただろう。ところが精神医学界が薬のイメージを守る筋書きに固執したので,とんでもなく大きな惨禍を生む結果になった。現在,アメリカでは,65歳未満の成人400万人が精神病による障害によって,SSIまたはSSDIの給付を受けている。また若年成人(18歳から26歳)の15人に1人に,精神病による「機能的障害」がある。そして毎日,約250人の子どもたちが精神病を理由に,新たにSSIに登録されている。こうした衝撃的な数字にもかかわらず,流行病を生むシステムは相変わらず稼働し続けている。今やこの国では2歳児が双極性障害の「治療」を受けているのだ。
ロバート・ウィタカー 小野善郎(監訳) (2012). 心の病の「流行」と精神科治療薬の真実 福村出版 pp.532-533
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