ところが,定員割れの私立大学の総数はこの1〜2年,横ばい傾向にある。しかし,そこにはトリックが隠されていて,実際には入学者が増加したわけではないケースも多い。入学定員や入学者数,在籍者数などの教育情報の公開が2011年4月から義務化され,どうしても自学の実態を公表せざるを得なくなったことが背景にある。
個々のデータを調べると,入学者が減少している分,入学定員も減少させて,入学定員充足率を見かけ上,良い数字にしている大学がある(もちろん募集力を高めて入学状況が好転しているところもないではないが)。基本的には,収容定員は文部科学省にも届けている適正規模の数字であり,それに対して在籍学生が何人いるかを見極めなければならないのだ。「数合わせ」で入学定員割れを逃れたとしたら,「トリック」といわれても仕方ないだろう。
木村誠 (2012). 危ない私立大学 残る私立大学 朝日新聞出版 pp.17
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