携帯電話で文章を書いたことのある人なら——いまや,ほとんどの人が当てはまるだろう——情報エントロピーに出くわしたことがあるはずだ。こちらが入力しようとしている言葉を,そして次に入力しようと思っている言葉を携帯電話が常に予測しているのに気づいたことがあるだろう。これがまさにシャノンのゲームである。
したがって,エントロピー(拡大解釈すればその「文字の」価値と言えるかもしれない)を経験的に測定する手段が欲しいのならば,実はすでに持っていることになる。携帯電話の推奨する単語にどれだけがっかりするか,文章を書き上げるのにどれだけ時間がかかるかが,エントロピーの高さを示している。書く時間がかかればかかるほど,書くときにイライラすればするほど,ほぼ間違いなく面白いメッセージになるだろう。
ブライアン・クリスチャン 吉田晋治(訳) (2012). 機械より人間らしくなれるか:AIとの対話が,人間でいることの意味を教えてくれる 草思社 pp.336-337
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