このAO入試は,本来「受験偏差値エリート」以外のやる気のある生徒を見つけるのが目的だったが,その拡大とともにだんだんとその意図が変質していく。
上位大学では,AO入試の条件である「単願で第一志望」,そして秋の時期に行われることを利用して,優秀な学生を確保するのが目的になった。いわゆる「青田買い」である。
一方下位大学には,とにかく学生を確保する目的がある。実際には下位大学では志願者全入に近い状態だ。無試験,学力試験なしの入学である。偏差値で50以下の大学では推薦・AOで学生数を確保できなければ経営が成り立たないのが現状だ。「一昔前では考えられなかったレベルの生徒が推薦・AOで合格しています」との都立高の教員の声もある。今やAO入試は二極化している。そして,こうしたことが「AO入試=『学力低下』元凶論」の背景にあるのだ。
中井浩一 (2007). 大学入試の戦後史:受験地獄から全入時代へ 中央公論新社 pp.89
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